2021年3月19日 (金)

登山用ソックスはなぜ重要か

 

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登山靴をご購入いただくお客様に

「登山用のソックスって普通のとなにがちがうの?」

「普段の靴下2枚履きじゃだめなの?」

「スキー用のなら持ってるけどそれじゃだめ?」

といった事をよく聞かれます。

これには、登山専用のほうがよい理由がちゃんとありますので

解説しようと思います。

これから登山靴を買おうという人や

店員におすすめされてなんとなく履いているという人に

参考になれば幸いです。

① Q.「登山用のソックスって普通のとなにがちがうの?」

   A.編み方と繊維の種類が違います。

登山靴は、普通の靴と比べると

硬く蒸れやすいつくりになっています。

Img_8682↑ハイカットの登山靴。

ソールから足首まで硬く、防水が入っているので蒸れやすい。

そのため、足の靴内の衝撃を和らげ、フィット感を高めながら

かつ蒸れにくい靴下が必要です。

◎パイル編である。

靴下を裏返すと

こんなかんじになっています。

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パイル編みになっていてることで

空気層を含んだ厚みが出来ます。

この厚みが、

クッションの役割を果たしつつ、

硬い靴ゆえに生まれる、靴内部の余計な隙間を埋めるので

フィット感を高めます。

さらに、パイルによる空気層は

秋冬のハイキングや夏の高山など

足先が冷える場面でも適度に保温する効果があるほか、

吸湿・吸水の機能も持つので

足をドライで快適に保ちます。

なので、バスタオルやスウェットなども同じく

パイル織り、パイル編みになっています。

(織りは伸縮性がない。編みは伸縮性がある。)

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↑普通の靴下でみられる平編み。

丈夫で伸縮性があり、パイルと比べると

縫製の手間とコストは少ないが、クッションや保温力は劣る。

◎ウール混紡である

普通の靴下の多くは

綿と化繊(ポリエステル・アクリル・ナイロン・ポリウレタンなど)の

混紡になっています。

ところが登山用の靴下は↓のようになっています。

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綿ではなくウールを使っている。

綿の繊維は水分・湿気をよく吸いますがなかなか乾きません。

化繊は、繊維一本一本には吸湿・吸水性はあまり無く、

化繊を使った布全体の構造により

水分を吸い上げ放出する機能があります。

ですが、防水層を持った登山靴の内部では

どうしても湿気を放出しきれず、

蒸れ感を感じやすいです。

ウール繊維は、綿繊維の2倍、ポリエステルの30倍の吸湿性がありながら、

吸った湿気を繊維内に封じ込めていく機能があります。

そのうえ繊維表面に天然の撥水機能をもっているため、

登山靴内部でも肌をドライに保つことが出来ます。

また、湿気により生じるニオイも同時に繊維内に閉じ込めるので、

防臭効果があります。

閉じ込めた湿気とニオイは洗濯時に一気に外へ放出されます。

ウール繊維の断面図は非常に複雑な構造をしていて

実に多機能なのです。

化繊が混紡されているのは、

耐久性や伸縮性を補強するためと思われます。

Img_5963 ↑メリノウールのベースレイヤー。ウール87%。

表面に立った繊維一本一本が多くの機能を持つ。

 ②Q.「普段の靴下2枚履きじゃだめなの?」

  A.現在は専用靴下の1枚履きが主流です。

ベテラン登山者さんのお話をうかがっていると、

2枚履きが主流の時代はたしかにあったようです。

しかし登山用品の進化により、今では

デメリットの方が多いように思います。

例えば、

・普通の平編みの靴下を重ねて履くと

 クッションが生まれない。

・より蒸れやすくなり、ニオイが出たり、

 蒸れた状態で靴の中であしが動き、

 擦れた部分に水膨れや靴ずれがおきる。

・過度な着圧により血流を妨げ、寒い場所で足が冷えやすくなる。

などが考えられますので、

2枚履きはあまりお勧め致しません。

Img_5948 ↑綿の平編みの靴下を重ね履きしても、

専用のソックスのような効果は得られない。

※お好みで2枚履をする場合、専用のインナーソックスをお勧めします。

非常に薄手で、保温力を増したり、蒸れ感をより軽減するのに非常に有効です。

③Q.「スキー用のなら持ってるけどそれじゃだめ?」

  A.素材や厚みによってはおすすめしません。

スキー用ソックスは素材、構造ともに登山用に似ていて

併用もありかもと思いますが、自分でネットで調べたり、

ウィンタースポーツをする知り合いに聞いてみたところ、

以下の点に注意が必要と思われます。

・ウールではなく綿を使っているものがちょくちょく存在する。

・上級者用のものは、足裏感覚を重視してあえて薄手してあるものがあり、

 十分なクッションが無い物がある。

・カット、パターンがスキー・ボードで踏ん張れるようになっているため

 使用感が登山用と異なる。

Img_5956 ↑スマートウールソックスの裏側。

登山をする上で、とくに負荷のかかる場所に

厚みを増してある。

 

Img_5952 ↑好日山荘PB バイレスソックスの裏返し。

フィット感を高めるた土踏まず部分の縫い方を変えてある。

毎日お店で、登山靴をご案内する側としては、

せっかく時間をかけて選んでいただいた登山靴を、

極力トラブルなく、快適に使っていただきたいという想いがあります。

靴や靴下に限らず、

我々が持てる情報を、ご来店のお客様や

このブログの読者の方と共有し、

お役にたてれば幸いです。

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