ギアコーナー戸田です。
今回ご紹介するのは冬ギアの中でも特別感のあるアレですね。
そう、『山ヤの魂』、ピッケルです。
アイゼンと同様、ピッケル=pickelもドイツ語でして、英語のアイスアックス=ice axeという呼び方もよく聞くようになってきましたが、日本ではまだまだ「ピッケル」が一般的。
ブラックダイヤモンド・レイブン
こんなのです。
さてこの道具、どう使ったものか。
まずは各部の名称を見ていきましょう。
①ピック
②シャフト
③アッズ
④石突(スピッツェ)
順番にいきましょう。
①ピック
ピッケルの性格をもっとも端的に表しているパーツといっても過言ではないでしょう。
この刃物感。男心をくすぐります(笑)。
しかし、実は出番はあまり多くないんですよね。
傾斜が特に強く、かつ凍っている場所で、シャフトを持ってピックを氷に突き刺す(or引っ掛ける)ように使ったり、斜面で滑落した時に雪面に押し付けるようにして使ったり(いわゆる滑落停止)。
こんな所です。
三重県・御在所岳のバリエーションルート、藤内沢での一コマ。
アイスクライミングほどではないけど下地が凍っているのでピックを使います。
ピックの形状により、少し細分化されます。
ブラックダイヤモンド・レイブンのピック
ペツル・サミテックのピック
ピックのカーブに違いがあるのがわかるでしょうか?
一般的なのはレイブンのピックで、シャフトから先端に向かって下方向にカーブを描いています。
サミテックのピックは、一度下方向に曲がったあとさらに逆方向にやや曲がっています。
このようなピックをリカーブピックといい、氷面に対してより垂直に近い角度で刺さるため、外れにくくなるメリットがあります。なので、、、
ノーマルピック→雪用
リカーブピック→氷用
かい摘んで言うととこんな適性の違いとなります。
もちろん、ノーマルピックじゃ氷に全然効かない、リカーブピックじゃ雪に全然効かない、という意味ではありませんのでご注意を。
あくまで適性の問題です。
選ぶ際の参考までに。
②シャフト
ただの柄、ではありません。ピックとの関係は密で深い・・・。
シャフトとピックが成す角度と、シャフトのカーブの度合いもそのピッケルの性格を決める要素だったりします。
ペツル・サミテックの赤線の角度は、37°程度。
ペツル・クォークの赤線の角度は42.5°程度。
サミテックはシャフトのカーブこそ緩いのですが、簡単な登攀にも対応するため、角度を鋭くつけています。しかし登る傾斜が増してくると、ピック先端にかかる力が壁から離れる方向になっていき、抜けやすくなってきます。
一方クォークは角度こそサミテックより鈍いものの、シャフトのカーブを大きくとることで、壁に対してより並行に近い向きに力がかかるような設計のため、傾斜の強い登攀要素の強いルートやアイスクライミングにも対応できるピッケルになるんですね。その代り、カーブがきつくなればなるほど、シャフトを雪面に刺し込むのには向きません。
このくらいの角度なら問題ないですね。
そもそも、比較的ゆるいカーブのシャフトは、まっすぐなシャフトに比べて雪面に刺した時により垂直に近い角度で斜面に刺さってくれるので”くさび”としての効きが良くなります。
それほど大きい違いではありませんが、カーブシャフトかストレートシャフトか迷うようならご相談くださいませ。
迷うといえば、シャフトの長さもみなさん決めるのが難しいという声をよく聞きます。
一般的に言われてきた、
「一番上を手でぶら下げるように持った時に、先端がくるぶしのあたりにくる長さ」
は、今ではやや長すぎるという印象です。
そもそもピッケルは杖ではありません。
斜面で使うことが前提のギアですので、使う人の体格によって適切な長さが変わるというより、使用する場面・地形によって適切な長さが決まります。
急峻な斜面であれば短い方が取り回しがしやすいですし、軽くなります。
2月 愛媛県・石鎚山
こんな斜面では48~55cm程度がいいですね。
4月 長野県・霞沢岳
これくらいなら60~66cmがいいでしょう。
普通、一つの山でずっと急傾斜だったりずっと緩傾斜だったりはしないので、どこに焦点を合わせるかで決まります。悩みどころですね・・・。
③アッズ
小さいショベル(スコップ)、という感じでしょうか。
実際、足場を整えるため雪や氷を削るのに使います。
足場の悪い場所で平らな休憩場所を作るなど。
形は製品によって様々ですが、大きい性能差はありませんので、
カッコいいのを選ぶのがいいです。
いやほんとに。
私のベストかっこいいアッズ、Simond Maverick MXC。
④石突(スピッツェ)
下地が雪だけでなく岩や氷が交るような場所では、この石突部分を突き立てて身体を安定させることになります。
アッズと同じく製品による差は少ないパーツですが、強いていうなら切っ先の鋭いものが氷にはよく効きます。注意したいのは以下のタイプ。
シャフトをスラッシュカットしているだけで石突がないものもあるんです。
これは主に柔らかい雪用で、岩や氷にはほぼ効きません。
軽量化のためにこのような形になっています。
使うかどうかわからないけど念のため持って行く等、ある意味割り切った使い方をする時は有効ですが、あまり一般的ではありませんので最初の1本にはオススメできません。
ここまで読み進めていただいた方、お付き合いありがたい限りです(笑)。
ピッケル選びが難しいのは、ピッケルがだいぶ、いやかなり、非常に様々な使い方をする道具だからです。
定型があってないような。
そのような道具だからこそ、私たちのようなスタッフがお店に立っているとも言えます。
月並みのようですが、わからないこと、悩んでいることがあればぜひスタッフに聞いてみてくださいと、ピッケルに関しては特に思います。
ご来店お待ちしております!
グランフロント大阪店 戸田
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