前回のフィッティング編に続き、今回は種類編です。
さて、登山靴にはたくさん種類があります。イタリアを代表する登山靴の老舗メーカー「ザンバラン」の登山靴を例に、ざっくりと登山靴の種類を紹介します。
一つ目は、パスビオGT。トレッキングブーツと言われるモデルの一つです。
ライトなトレッキングに適し、日帰りから小屋泊まで幅広く登れる入門向け登山靴の一足です。この手のモデルは、レザーはもちろんですが、アッパー素材にマイクロファイバー(合皮)やナイロン系素材も採用される事が多く、柔軟で軽いのが特徴です。ソールは適度に固く、ぬかるんだ登山道でもしっかりと踏み込めます。
二つ目は、ジョラスGT。アルパインブーツと言われるモデルの一つです。
テント泊縦走や岩稜帯が多いルート、残雪期にも対応するテクニカルな登山靴です。この手のモデルで特徴的なのは、靴の周りにラバーを巻き付けている点です。岩稜帯での足回りの保護や、アイゼン装着時にアッパーの摩耗を抑える役目もあります。ソールは上のパスビオGTに比べ更に固く、テント泊装備のように10キロ以上の重量にも耐えられる作りになっています。近年ではソールの指先部分がフラットなものが多く、突起している岩の上でもしっかりと指先で立ちこめるようになっています。低山の日帰りではやや不向きなモデルですが、岩稜帯の多いルートであれば日帰りで使用するもの有りですね。
アルパインブーツには、踵部分に「コバ」という固い素材でできたアイゼンのバックルを引っかけるパーツが付いています。写真右端のパスビオGTにはコバは付いていません。
ジョラスGTはセミワンタッチ式のアイゼンが装着可能ですが、靴自体に保温材が入っていないため、厳冬期の高山での使用は適しません。
さて、残りは冬期登山専用モデルです。
三つ目は、ドリューGT。一般的な呼び名は・・・冬靴でしょうか(笑)
一つ前に紹介したジョラスGTをベースに、保温性と剛性を高めた冬期用の入門モデルです。ゴアテックスと保温素材を一体化した生地を採用し、近年ではレザーの代わりに耐久性に優れ保水しにくい合皮や合成繊維素材がアッパーに使用される事が多くなってきています。
最後は、パイネプラスGT。セミダブルブーツと言われるモデルの一つです。
ドリューGT同様に冬期用モデルですが、3000m以上の厳冬期の縦走やアイスクライミングに適します。インナーブーツ型の構造は、保温性がより高く長時間の歩行や停滞時でも足元を冷やしません。モデルによってはインナーブーツが取り外し可能なダブル構造のもあります。
これら二つのモデルは、アイゼン使用が前提のためソールはとても固くほとんど曲がりません。踵部分と指先部分にもコバが付いており、装着性の高いワンタッチ式アイゼンに対応します。
厳冬期に対応したこれら二つのモデルでも、アッパーの構造や厚みにより保温性に違いがあります。例えば、冬場でも登山客が多く比較的踏み後がしっかり残る2000mクラスの八ヶ岳であればドリューGTのようなモデルでも大丈夫ですが、人の立ち入りが少なく長時間ラッセルが必要とされる3000mクラスの南アルプスの山々、バリエーションやアイスバイルを必要とするルート、また長時間停滞し撮影をされる方はパイネプラスGTのようなインナーブーツ型の登山靴が向いているでしょう。
今回はざっくり4種類に分けて登山靴を紹介しましたが、細分化するとまだまだ種類はあります(笑)。当店では、登られる方のレベルや用途に合わせて店頭スタッフが登山靴選びのお手伝いをさせていただきます。
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