いつも松本パルコ店をご利用いただき、ありがとうございます。
スタッフ 杉原です。
厳冬期の登山はしないけれども、残雪期の山には入ってみたいという方は多いと思います。
4月に入ると、春から雪のある山を始めるという方が沢山お店に来られます。
当然、無雪期の装備で残雪の山に入るのは危険ですし、対応できない部分が出てきますから、いろいろと装備を買い足したり、グレードアップする必要が出てきます。
今回は夏も使える装備の範囲内で、残雪期に対応するレイヤリングをご紹介します。
まず、アウターです。写真はバーグハウス:CAPE WRATH SHELLJKT&ノースフェイス:クライムライトパンツ
着ているのは、冬季登山用に作られたハードシェルではなく、ちょっと良い値段のするレインウエア、オールウェザージャケット、パンツです。
数年前までは、レインウエアと言えば上下セットでスタッフバックに入ったものがほとんどでしたが、今は様々な付加価値を付けて、上下別々で売っているモデルも多いです。当然、価格も高くなり、ジャケット単品で3万円~4万円くらいになります。パンツも然り。
これらは上下セットのレインウエアよりも、優れている点がいくつかあります。
・裏地、防水メンブレンの透湿性、耐久性を向させている。表生地も丈夫。
・高度な立体裁断により、ダボつかず、動きやすい。ジッパーなどもちょっとグレードアップしている。
・ストレッチ素材のものもある。
・だいたいのモデルがヘルメット対応フード。風雪からも顔を守れるように、ジッパーを上げると鼻の辺りまで覆えるように設計されている。
雪のある山、寒い山では夏よりも厳しい外部環境から体を保護する必要がありますし、ほとんどの時間、シェルを着用して行動します。このため、動きやすさと機能性・耐久性を重視したハードシェルが必要です。とりあえず、雨の中を歩ければいいかな、くらいのレインウエアではいろいろと不足があります。
ノースフェイス:クライムライトJKT&パンツ、パタゴニア:クラウドリッジJKT&パンツも残雪の山~夏山まで使えます。
これらの製品の特徴はもちろん夏の山でも活きてきます。実際に着て雨の中を何時間も歩いたらその快適性は雲泥の差です。この機会に上下セットのレインウエアからアップグレードしてみてはいかがでしょう?
※上下別々売りのレインウエアには、防水性を多少犠牲にして透湿性を向上させているモデルや、極薄すぎるモデル、内側に保温着を着る余裕がないほど、身体に密着する裁断をしているモデルなど、個性的なモデルが多くありますので、ご注意ください。
インナーです。ベースレイヤーはメッシュの速乾シャツなどよりも、薄手のウールや化繊の吸湿性に優れたシャツが良いでしょう。
その上にフリースなどの保温着を重ねますが、最近は高い通気性と伸縮性を備えた化繊綿のジャケットが各社から発売されており、これも快適です。フリースより軽量でかさばらず、ダウンのように濡れてアウト、ということもありません。
休憩中やビバーク用に薄手のダウンジャケットなど、+αの保温着もお忘れなく。
もう定番ですが、ファイントラック&ミレーのドライレイヤー。こちらもお忘れなく。汗冷え感が全然違いますよ!
湿ったベースレイヤーも早く乾きます。
ボトムのインナーは、個人的にはフリースパンツやウールのタイツがベストと思っていますが、
上高地などのアプローチをピタピタのタイツで歩くのが恥ずかしい場合は、インナーに夏用のパンツを履いても良いと思います。
その場合は伸縮性+立体裁断+ダボつかない+できればウエストはバックルではなく紐締めのものがベストでしょう。写真はノースフェイスのアルパインライトパンツですが、シェルパンツのインナーとしても優秀です。真冬でもけっこう使えます。
グローブは本当に多種多用なものが出ているので、何がベストとは言いにくいですが、
ウールインナー+オーバーグローブは定番です。
写真ではウィンドストッパーのグローブに濡れ対策でオーバーグローブをしています。
春の山はウィンドストッパーやアウトドライなど、多少の防水性を持ちながらも通気性に優れたグローブが快適ですね。ただし、雪を触れば濡れますので、オーバーグローブは持って行きましょう。
残雪期から雪山に入られる方は、もともと持っているライトアルパインブーツにセミワンタッチのアイゼンを合わせるケースが多いと思います。
この場合、アイゼンと靴との相性は冬靴にアイゼンを合わせる時よりも慎重に見る必要があります。
夏用の靴は、そもそもワンタッチアイゼンを装着できないので、固定力が弱くなります。また、アイゼン装着を前提に設計されている冬靴よりもつま先部分の反りが大きいので、隙間ができてしまう事があります。上の写真は隙間なしでOK。
これはちょっと微妙です。つま先の隙間に雪が入り込んでアイゼンを浮き上がらせ、外れる原因になりますし、
隙間ができることでアイゼンのフロントポイントに力が伝わらず、固い斜面で不安定な登高を強いられます。
さて、残雪期の山ですが、同じ標高でも八ヶ岳や南アルプス前衛と、北アルプス北部や上越とではコンディションが大きく異なります。同じ装備で登れないこともあります。雪が地形を変えてしまうような山域では豊富な経験が必要です。また、5月でもひとたび寒気が入ったり前線が通過すれば、山は厳冬期のコンディションと変わらず、上記の装備では対応できない場合もあります。
今の時期、店頭には残雪期登山、春山登山にピッタリなウエア類が沢山並んでいます。また、新素材を採用したモデルも多く出てきています。
春から雪山を始められる方、是非ご相談ください。